2012年07月13日

子どもは大人のかがみ

kyouikuzukan.jpg読売新聞ほうむたうん 2009年4月号掲載

以前食わず嫌いの調査をした時、
ひとつなるほどと思ったのは、家族との関係でした。
食わず嫌いをする子の家族には、やはり同じような
食わず嫌いの人がいることが多かったのです。


子どもは、小さいうちは酸っぱすぎるものや、
辛いもの、苦味があるものを嫌います。
それは、本来食べ物は、腐りかけると酸っぱくなり、
毒があると苦くなるということを
本能的に知っているからだと言われています。

やがて成長とともに味覚が育ち、何でも食べられるようになってきます。
ところが、家族の中に野菜嫌い、魚嫌いなどがいると、
「食べなくてもいいのか」と思ってしまうようです。


話は違いますが、親が暴力を振るうとその子どもも友だちや
自分の子どもに暴力を振るうという暴力の連鎖についても、
近頃よく指摘されています。

基本的な生活習慣から、他人への接し方まで、親は子どもの良い手本となり、
あるいは悪い手本となり影響を与えているわけですね。

ですから、その子を変えようと思ったら、
まず親から始めてみるのもひとつの方法です。


 たとえば、人に挨拶やお礼がきちんと言えない子がいたとします。
そうしたら、それを叱るだけではなく、
毎日子どもと接するときに、親の方からきちんと挨拶をしたり、
心をこめて「ありがとう」を言ってみたりしてはどうでしょう。
そんな小さなことの積み重ねで、子供は確実に変わっていくはずです。


しかしそれは、親が子どもの代わりに挨拶をしたり、
お礼を言ったりすれば良いということではありません。
子どものやるべきことはあくまでも子どもがやるべき。
子どもの手本となるような行動を親が意識して、
どもの前でやって見せるのです。

もしあなたが、その子にきちんと部屋の整頓をしてもらいたいと思ったら、
かわりに片付けてあげたり、掃除したりしては逆効果になります。
親が率先して家の大掃除などを行い、それを手伝わせることによって、
掃除することの気持ちよさを一緒に体験させることが大切です。

「ああしなさい、こうしなさい」と命令するよりも、
心をこめて体験させることの方がずっと効果があるのです。

様々な子どもたちと接してきた中で、私も実感しています。
まず大人が動いてみることによって、子どもの良い面を引き出せることが実は多いのです。



posted by カメ先生 at 10:33| Comment(0) | 親子関係

叱るのをやめたら どうなるの?

kyouikuzukan.jpg 読売新聞ほうむたうん 2009年3月号掲載


「子どもが言うことを聞かなくて…」
母親なら誰しも口にしたことがあると思います。
叱られないと動かない、動き出しても文句や
生意気なことばかり言う、そんな姿が目に浮かびます。

しかも、こういう子どもほど、絶えず親がかまってくれているので、
依存心が抜けにくいらしい。
主体性が育ちにくく、親の思いとは裏腹です。

叱られるまではゴロゴロしていよう、うまくすれば親が手伝ってくれる…
そんな計算も無意識に働いているでしょう。


ならばいっそ、叱るのを一切やめて放っておけばどうなるでしょう。
実は、私は、やったことがあります。

問題の多いクラスでしたが、ある日子どもたちにこう話しました。
「あと1週間で運動会です。そこで先生は考えました。
楽しい運動会にするために、運動会が終わるまで、大きな声で叱ることをやめます」

それまでは毎日のように、大声を出していたクラスであり、
私もよくよく考えての決心でした。

果たして、結果はどうだったか?

なんと丸ごと1週間、大声を出すどころか小言さえも言わず、運動会は大成功でした。

 成功の秘けつは、次の3つ。

【1】その週、その日の予定をわかりやすく示し、
   やるべき取り組みの見通しをきちんと伝える。

【2】きちんとやらないと、放課後残ってやってもらったり、
   宿題が増えたりすることを承知してもらい、
   もしそうなったら、静かにそれを実行させる。

【3】何か起きたら、まず子どもの話を良く聞き、
   よい点は認め、直すべき点は、叱らずに本人に考えさせる。


その場で言いたいことがあっても、がまんして注意せず、
次の予定や指示の説明の時にこんな時はどうしたらよいのだろうと
本人に投げかけるようにしました。

すると、今まで文句ばかりだった子どもたちが、
だんだん自分から反省するような発言をするようになってきたのです。

もちろん それが全てに有効だとは思いません。

でも実際に、普段言うことを聞かない子どもが動き、
何の問題も起きませんでした。
なにより、自分から動き出せば認めてもらえるという実感は、
主体性が育つきっかけとなったようです。

行き当たりばったりではなく、手間はかかりますが、
先の見通しをたてて子どもと話し合うことは大切です。
叱らないのも、ひとつの手なのです。



posted by カメ先生 at 10:30| Comment(0) | 親子関係

2012年07月10日

ほめられて伸びるタイプとは? 

kyouikuzukan.jpg 2009年2月号掲載


以前ほめ方のお話で、合格したらほめる・努力をほめる・潜在能力をほめる・
できないところをほめるという4つのほめるについて述べました。
今回は5つ目の『ほめる』をお話しします。

「オレって、ほめられて伸びるタイプなんだよね」という人をときどき見かけます。
誰だって叱られたくはありません。
本当にそういうタイプはいるのでしょうか?

例えば、子どもがテストで98点をとってきたとします。
満点に近い結果をほめてあげますか?

あと2点どうしてとれなかったのかと、責めますか?

ほめられたいタイプの子どもは、自分のがんばりを認めてもらえず、
結果だけを見て叱られることにストレスを感じます。

真剣に取り組んで努力をしたが結果はうまくいかなかった、
何らかの理由で本来の力を発揮できなかったなどという時、
自分でも失敗に責任を感じている場合がほとんどで、
人から言われなくとも、悪いと思っているのです。
そんな子どもを、頭ごなしに叱れば、
「ぼくだってがんばったのに、わかってくれない」と反発します。

また近いタイプで、いつも一歩足りないと叱られる子どももいます。
本人はやる気でがんばっていますが、いつも詰めが甘い、
やり残しが目立つ、他人への心遣いが足りないなど、
あと一歩が及ばず、結局叱られる子どもです。
このタイプの子どもも、がんばっているのだから、
あまり叱ると、せっかくのやる気が失われたり、
落ち着きが無くなったり、逆効果になりかねません。

そこで登場するのが、「一歩先をほめる」ほめ方です。

自分の取り組みを認めて欲しい子どもには、
結果が出ないことを叱るのではなく、
きっと近いうちにうまく行くよ、ほめられるよと励まします。

一歩足りない子には、小言をいうのではなく、
あとひとつだけ、ここをがんばってごらんと導き、
少しでもうまくいったら、心からほめてあげるのです。

これがうまくいくと、子どもは小さなミスをこわがることなく、
何でも前向きに自分から進んで取り組むようになってきます。

もしも、少しでも子どもにやる気があることを感じたら、
頭ごなしに叱ることはやめましょう。
まずは、子どもの話を充分聞いてやり、がんばりを認め、
あと少しで良い結果が出そうなら、
あえて叱ったり注意したりせず、一歩先をほめて導いてあげます。


子どもは皆、ほめられれば自信をつけ、伸びるのです。



posted by カメ先生 at 11:02| Comment(0) | 親子関係