2013年09月06日

ガラパゴスの磯

kyouikuzukan.jpg 読売新聞ほうむたうん 2010年7月号掲載


今月は、カメとエコの話をしましょう。

20年前、新婚旅行の時、どうしても行きたい場所がありました。
ゾウガメのいるガラパゴス諸島です。

当時は費用も高く親族の反対もありましたが、旅行の日程に無理やりねじ込んで、
一週間ほどガラパゴスクルーズに参加することができました。
個人旅行でしたが、偶然日本人の旅行グループが参加していて、
ちゃっかり日本語のガイド付きで島々をめぐりました。

なんといっても、すごかったのは動物が人間を怖れないことでした。
人間が近づいても海鳥も、イグアナも、ゾウガメも逃げません。
間違えて踏んづけそうになったり、アシカやペンギンと一緒に
海岸で泳ぎまわったり、貴重な体験をしました。

その中で、不思議に思ったのはガラパゴスの磯です。
島のあたりは、フンボルト海流という寒流が流れ込み、
魚貝類も豊富だと聞いていました。

ところが、どの島に行っても上陸して海岸を観察すると、
生き物の種類がとても少ないのです。

たとえば、日本の三浦半島の磯に行けば、フジツボやカメノテ、
いろいろな貝やヤドカリが岩にくっつき、色鮮やかなイソギンチャクやウミウシ、
さまざまな海草がまるで花畑のように見えます。
そこに大小のカニや逃げ遅れたハゼやエビがはねたりします。

ところが、ガラパゴスの磯で、私が見たのは、
大きなアカイワガニとクロナマコばかりでした。
陸地にはガラパゴス固有の珍しい生物が山ほどいるのに、
なんで磯はこんなにさびしいのだろう。

その答えがわかったのはそれから数年後沖縄に行ってからでした。

沖縄の磯をあちこち見て回ってわかりました。
沖縄といえばサンゴが有名ですが、場所によって、やはり、
たくさんの種類が見られる磯と、ガラパゴスのようにさみしい磯があったのです。

原因は意外なことでした。
水はきれい過ぎてもダメなのです。

生物がたくさんいる磯の近くには、必ず川やマングローブ、
ジャングルなどが控えていました。
寂しい磯は、離島や小島の磯で、水がきれい過ぎる場所でした。

つまり植物性プランクトンが育つ養分が足りないのです。
ですから、動物性プランクトンも、それをエサとする小動物も住むことができないのです。

生物学的には、貧栄養状態といいます。
よく、養殖のカキを大きく育てるために上流に苗木を植えて
森作りからはじめるといいます。
磯を見るとそれを実感できます。

海の生き物を育てているのは、森であり陸上の豊かな自然なのです。
近くに大きな森林の無い小島、植物の養分を海に運ぶ川の無い場所では、
水がきれいすぎて、貧栄養状態となり、生物の多様性に乏しいのです。

見た目のきれいさだけでなく、本当に豊かな自然とはどんなものなのか、
本物の自然を子どもに体験させてあげたいものです。


posted by カメ先生 at 15:20| Comment(0) | その他
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