2012年07月17日

明日の予定・昨日の失敗・今日のやり方

kyouikuzukan.jpg 読売新聞ほうむたうん 2009年10月号掲載


子どもにはいつもやさしく接したいと、本当は大人も思っているのです。
でも、やさしすぎればつけあがる、そうそういつもやさしい顔ばかりはしていられません。

実際教育の現場では、初対面の子どもたちに対して下手に出たり、
甘やかすような態度をとると、自分のほうが立場が上なのかと
勘違いした子どもになめてかかられます。
子どもと仲良くしたい新任の教師などは、このあたりで苦労することが多いのです。

大切なのは、やさしさの中にもリーダーシップを持って接し、
導いてあげることですが、難しいのは、いつも理屈で返すタイプの子どもです。

そんな時の秘策をひとつ。実は、よほど頭のいい子でも、
なかなか育っていないのが、時間の観念なのです。

子どもは、今をどうやってラクに楽しむかをメインに考え、
昨日のことや明日のことはおざなりになりがちです。
そこで大人の登場です。明日の予定、昨日の失敗、今日のやり方を例に出し、
時間をうまく使えば、リーダーシップをとることができるのです。

「明日は、お友だちが来るんでしょ。この間は片づけがたいへんだったから、
今日のうちに掃除したほうがいいわよ。やり方を教えてあげるから」
「もうすぐ提出日でしょ。この間みたいにぎりぎりで大あわてしないように、今日から計画を立てて始めましょう」
などと、時間の観念をうまく使って、やさしく声をかけるとよいでしょう。

「忘れてた、明日は○○があるんだった」と、気づかせるのです。
子どもがきちんと動けば、自主的に動いたことをほめてあげましょう。
動かず、当日大変なことになったら手伝ったりしないで、自分で責任をとらせましょう。
「あの時親の言う通りにしておけばよかったかなぁ…」と思わせれば、ほぼ成功です。
そのうち、大人の言うように明日の予定を考えて
行動するとうまく行くことがわかれば状況が変わってきます。
親がリーダーシップを発揮する関係ができるのです。

その場で思いついたことをガミガミ言うより、長期的な見通し、
ここ一週間の予定、明日明後日の大事なことをあらかじめ頭に入れて、
過去の子どもの失敗と照らし合わせ、やさしくアドバイスしてあげましょう。

子どもは、本当は信頼できるリーダーを求めているものなのです。


posted by カメ先生 at 11:13| Comment(0) | 生活

おとなしい子ほど気にとめよう

kyouikuzukan.jpg 読売新聞ほうむたうん2009年9月号掲載

「うちは、上はおとなしいんだけれど、下がワンパクでね」
などという言葉を時々耳にします。

おとなしいというのは、よくほめ言葉として使われるようですが、
実際はそう簡単なものではありません。

「問題児の多いクラスを立て直すコツはありますか」と聞かれた時、
私はよくこう答えます。
「ケースによりますが、おとなしい児童が、キーポイントになることが多いですね」

そうなのです、おとなしい子どもの扱い方は、要注意なのです。

実は、手のかかるワンパクな子は、
目立つのでいろいろな場面で大人に声をかけ、
手をかけてもらえます。

また、行動的なため、自分の得意なことや、
能力を発揮できる機会にも恵まれます。

ところが、おとなしい子は、つい放っておかれがちになり、
能力を発揮できるチャンスをみすみす逃すことも少なくありません。

そう、おとなしい子は、損をすることが多いのです。
例えば、問題児の多いクラスの場合、教師がつい問題児ばかり指導をしていたとします。
その時、おとなしくしている大多数の児童は放っておかれ、我慢をしているのです。

表面上はおとなしくても、不満や反感を溜め込んでいることもあるのです。
こんな状態が長く続くと、おとなしい子が突然切れたり、
非協力的に変化して行きます。ある日気がつくと、
教師の言うことを聞く子どもがひとりもいない、なんてこともあるのです。

おとなしいからといって、不満やストレスがないわけではありません。
なんらかの理由でそれを外に出さないだけなのです。

クラスの中では、ワンパクな子もおとなしい子も、
同じだけ手をかけるよう、気づかいます。
おとなしく努力家の子たちが得意な学習発表会や自由レポートを企画し、
その中で、その子たちを活躍させ、評価します。
すると子どもたちは「大人は自分たちをきちんと見ていて努力すれば評価される」と
考えるようになります。
さらにそれを進め、人と関わる力をつけていけば、
クラスの中で優秀なリーダーに育つ可能性だってあるのです。

おとなしいからといって、いつも満ち足りているわけではありません。
おとなしい子ほど、気にとめ、声をかけましょう。
不満を聞きましょう、得意なことを伸ばしてあげましょう。


posted by カメ先生 at 11:09| Comment(0) | 生活

2012年07月14日

プラス面、マイナス面はセット

kyouikuzukan.jpg 読売新聞ほうむたうん 2009年8月号掲載


最近携帯電話を持つ小中学生が増え、それに伴い、依存症、料金、
有害サイト、いじめの温床になる学校裏サイトなど、
いろいろな問題が話題になっています。

自治体によっては、中学生以下の携帯に事実上規制を定めたところさえあります。

が、その一方で子どもの安全を守るものとしてのニーズが高まっているのも事実です。

しかし当の子どもたちは「友達が持ってるから」とか
「持ってないと仲間はずれになるから」などと言う理由で
しつこく親にねだります。
さて、どうしたらいいのでしょうか。

こんな時、私がいつも考えるのは、プラスマイナスゼロの原理です。

すべてのものには、プラス面とマイナス面があり、
マイナス面は埋めていかなければなりません。
ただ楽しい思いだけをすることは、ありえないのです。
たくさんのお金を得るためには、厳しい労働が、よい結果を出すには、
たえまない努力が、かわいい犬を飼うには世話やしつけが必要なのです。
つまり、プラス面とマイナス面、すべてのものはセットになっているのです。
それを買ったことによって、勉強や家庭生活に問題が起きるようなら、
事前に決まりや条件を作って、マイナス面を防がなくてはなりません。
「条件さえ守ればいつでも買ってあげるわ」「条件?」
「まず、○○を毎日きちんとすること。あと、家族に迷惑がかかることをしたら使用禁止よ」「家族の迷惑って?」
「それはね」…などと、時間やマナー、料金のことまで細かく決めたほうがよいでしょう。

 楽しい思いには、必ずそれに見合うだけの決まりや働きをセットにして提示するのです。
それが、約束できないなら買わない、決まりを破ればすぐに取り上げる、と。

リスクや努力なしの甘い汁を一度体験すると、
子どもは甘えたりわがままを通せばどうにでもなるとたかをくくるようになり、
欲求がエスカレートすることも少なくありません。
それがいずれ、依存体質になって、やってもらって当然という身勝手な考え方をしてしまいます。
何の努力もせず、欲求が通らないとすぐに切れたりします。
楽しい事のためには、つらいことや我慢することが必ず付いてくるのだということを伝えましょう。
子ども自身がマイナス面をしっかり埋めて、プラスとマイナスがきちんとゼロになるように、話し合ってみましょう。


posted by カメ先生 at 14:19| Comment(0) | 生活